『死後離婚』という制度、ご存知ですか?
あまりなじみのない言葉ですが、
実は最近注目を集めつつある制度です。
行政書士の私のもとにも、
死後離婚を希望して相談にこられる方が
毎月いらっしゃいます。
字面だけみると「配偶者の死後に離婚!?」
となんだかびっくり&寂しい気もしますね(><)
でも、死後離婚を上手く活用することで
残された配偶者のその後の人生を
よりよいものにできる場合もあります。
そこで今回は
- 死後離婚とは?
- 死後離婚の遺産相続
- 死後離婚のメリット・デメリット
を詳しくご紹介します。
実際するしないにかかわらず
死後離婚について知っておくだけでも、
配偶者が亡くなった後の人生の選択肢を
ぐっと増やすことができますよ。
死後離婚とは?
『死後離婚』とは、
配偶者の死後に姻族関係終了届を
提出することによって
義理の家族との縁を切ること
です。
「姻族」とは配偶者の家族・親族のこと。
つまり舅や姑といった義理の家族ですね。
通常の離婚の場合は、
離婚届を提出した時点で
義理の家族とも関係が切れます。
しかし死別の場合はその関係が切れないため、
死別後も義理の家族と家族・親族のままです。
関係を断ち切りたい場合は
姻族関係終了届を提出する必要があります。
姻族関係終了届の提出方法
姻族関係終了届は届出人の意思だけで提出でき、
義理の家族の承諾などはいりません。
書類はA41枚で、
最寄の市区町村役場で入手できます。
(ダウンロードが可能な役場もあります)
必要事項を記入の上、
届出人の本籍地または住所地の役場に
書類を提出すれば完了です。
死後離婚の遺産相続はどうなるの?
さて、ここで気になるのが『遺産』ですよね。
なんだかんだいっても
やっぱりお金は大切です。
お子さんの進学や自身の老後のためにも、
死後離婚をした場合の遺産の行方を
知っておきましょう。
遺産はもらえる?
死後離婚をしようがしまいが、
遺産はなにもかわりません。
死後離婚をしない場合と同額の遺産を
もらうことができます。
具体的な相続分は
遺言の有無などによって違いますが、
民法上、配偶者は遺産の1/2を
相続することができます。
遺族年金はもらえる?
遺族年金も
死後離婚によってかわりません。
死後離婚をしない場合と同額の遺族年金を
もらうことができます。
ただし!
再婚した場合は受給資格がなくなるので、
注意してくださいね。
借金はどうなる?
亡くなった配偶者に借金があった場合に
通常の方法で遺産を相続してしまうと、
死後離婚後も借金は残ります。
- プラスの財産の範囲で相続(限定承認)
- 相続をすべて放棄する(相続放棄)
のどちらかの方法をとりましょう。
どちらも期限に限りがあるので、
死別後3ヶ月以内に
家庭裁判所で手続きをとる必要があります。
保証人には要注意!
特に注意が必要なのが、
亡くなった配偶者が
義理の家族の借金や賃貸の
保証人になっていた場合
です。
通常の相続では保証人の地位も
相続人に引き継がれてしまいます。
そのため、せっかく死後離婚をしても
相続した保証人の地位は残ってしまいます。
義理の家族の借金の保証人で
あり続けなくてはいけないことになるのです。
配偶者が保証人になっている場合には
弁護士などの専門家に相談して、
相続放棄などを検討しましょう。
死後離婚のメリット・デメリットとは?
では最後に
死後離婚のメリット・デメリットを
まとめておきましょう。
メリット
1.義理の家族ともう付き合わなくていい
義理の家族との付き合いは、
誰であっても大なり小なり大変ですよね(><)
配偶者が生きていたときは
「夫(妻)のため…」と我慢できていたことも、
死別後はもう無理!って場合もあって当然です。
姻族関係終了届を出せば、
もう義理の家族でもなんでもない他人になれます。
- 介護義務
- 扶養義務
- 同居
- お墓の面倒
などなど、一切する必要がなくなるのです。
死別後もこういったことを強要されている方には
大きなメリットです。
義理の家族と義務から解放されて、
より豊かな人生を歩むことができます。
2.遺産や遺族年金には影響しない
義理の家族との面倒な関係はなくなっても、
遺産や年金にはなんら影響ありません。
死後離婚をしない場合と同額を
相続または受給できます。
3.子どもと祖父母の関係は続く
あなたと義理の家族との姻族の関係は
死後離婚によって終了してなくなります。
しかし、あなたの子どもと義理の家族との間には
血縁が残ります。
孫であり祖父母である関係は
この先ずっとかわりません。
そのため死後離婚後もかわらず、
子どもが祖父母の遺産を相続したり
教育費の援助に関する税金の優遇制度を
利用したりすることができます。
死後離婚のデメリット
1.義理の家族と険悪になる
姻族関係終了届は
義理の家族にとっては『絶縁状』も同じ。
「実の娘(息子)と思って接してきたのに、
あの子が死んだとたん他人なんてヒドイ!!」
と険悪になる可能性が高いのです。
そもそも、法律上は先ほどお話しした
- 介護義務
- 扶養義務
- 同居
- お墓の面倒
などのわずらわしい義務は
死後離婚をしようがしまいが
亡くなった人の配偶者にはありません。
本来なら、双方の話し合いで
死別後の負担の範囲を決めればすむことです。
なのに勢いにまかせて死後離婚をすると、
あなただけでなく子どもと祖父母の関係まで
絶縁させてしまいかねません。
一度冷静になって、よく考えましょう。
2.姻族の回復はできない
亡くなった配偶者の兄弟と再婚するなどの
特殊な例でない限り、
一度断ち切った姻族関係は回復できません。
義理の家族と親族関係を取り戻したい場合は
養子縁組しか方法がないのです。
二度と取り戻せない姻族関係を
手放していいのか、よく考えましょう。
まとめ
いかがでしたか?
死後離婚とは、
配偶者の死後に姻族関係終了届を
提出することによって
義理の家族との縁を切ること。
死後離婚をすれば、
- わずらわしい義理の家族との関係を
一切断ち切ることができる - 遺産や遺族年金に影響はなく、
通常と同額をもらえる - 子どもと義理の家族の関係は
変わらず続く
というメリットがあります。
しかし、死後離婚は『絶縁状』も同じ。
あなただけでなく子どもと祖父母の関係まで
絶縁させてしまいかねません。
配偶者の死後、
義理の家族との関係に悩む方は多いです。
腹の立つこともたくさんあるでしょう。
しかし姻族関係終了届を出す前に、
もう一度よく考えることが大切です。
その上で死後離婚をするのなら、
わずらわしい関係性から解き放たれて
より豊かな人生を
歩むことができると思いますよ(^^)